新たな障害区分の認定について(障害者自立支援法の基礎知識)

新たな障害区分の認定について(障害者自立支援法の基礎知識)

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新たな障害区分の認定について

これからは、障害の種類にかかわらず、市町村レベルで共通の制度によりサービスを提供するようになります。今までは障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害など)によって、異なる系統だった各専門施設も、一つの基準に統一されます。新たな障害区分のレベル分けは、10月から本格的に始まります。一見わかりやすくなるように思えるし、「どんな障害でも、地域でこまやかに対応できるようにする」という目標をみると、すばらしい生活が送れそうです。が、実際は現場の混乱を引き起こしています。

今問題になっている一つは、入所者、通所者の障害区分によって施設が受ける補助金額が変わってくることです。障害区分のレベル分けと併せて、障害に対するサービスの量も10月から見直されるので、従来より大幅にサービスがカットされる入所者がいると、その結果、補助金が大幅に少なくなることが予想されています。補助金の獲得は、小規模な施設や作業所にとって死活問題です。

また、訓練や作業の時間数によっても補助金は変わります。「1割」を払うお金がないからサービスが受けられない、と、障害者が施設に来ないケースも実際に発生しています。作業に出る日数や人数で補助金が決まる部分もありますから、施設の利用者が少なくなれば、これまた補助金が減らされます。補助金カットは、どうしても人件費のカットなど、サービスの質の低下に直結します。

当事者が施設に来なくなると訓練が滞り、症状が悪化するおそれがあるだけでなく、家庭での生活が見えにくくなります。孤立や虐待、介護者のうつ発病などを未然に防ぐためにも、施設への通所は重要なのです。経営不振で閉鎖され、行き場のない障害者がでないよう、対策を講じる必要があります。

もう一つ、非常に危ぶまれていることがあります。障害区分の認定法が、介護保険の認定ソフトに酷似している点です。「1人で立てる」「歩ける」など、どうしても身体的な障害に重きが置かれ、一応自力でできるが、見守りが不可欠な知的障害・精神障害が軽く認定されやすいのです。入所型でも、自宅介護型でも、必要なサービスが減らされる可能性が高くなっています。

こうした介護保険との類似は、将来的に障害者自立支援法と介護保険法の統合も視野に入れられているのではないかという憶測を呼んでいます。しかし、「障害者自立支援」とひと口に言っても、身体、知的、精神、乳幼児まですべてに通じる人の育成は、ようやくこれから始まろうというところ。ましてや、これに高齢者介護を加えていくなど、一朝一夕には不可能でしょう。

1人ひとりの障害や生活が見えにくくなりはしないか? 共通性ばかりに目がいって、個々の障害のもつ特殊性が切り捨てられていかないか? 拙速な制度の一本化には、不安要素が多すぎます。まずは、この法律によって利用者の生活がどう変化するか、追跡調査をする必要があるでしょう。そして経過措置後の法律改正では、「一本化しやすい」という形にとらわれず、症状の改善や、社会復帰がスムーズになることを第一に考えて、障害区分の認定やサービス内容を組み直すことが望まれます。

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執筆ライター 仲野マリ

【プロフィール・実績など】

2001年ダンスマガジンの「ダンス評論賞」で佳作入賞「同性愛の至福と絶望―AMP版白鳥の湖をプルースト世界から読み解く」。Femme Politique 52号(2006年6月末発行予定)「小沢一郎はいったいいかなる人物か」(取材・執筆協力)/「財政に強くなろう(2)」(講話まとめ)。障害者団体会報の編集に10年ほど関わり、年5回の会報を企画・編集・校正・入稿まで手がける。


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